MENU

自転車で坂道を楽に登る方法と疲れにくい乗り方の秘訣

自転車で坂道を楽に登る方法と疲れにくい乗り方の秘訣

自転車で坂道を登るとき、多くの人が「ママチャリだと本当にしんどい」と感じたことがあるはずです。

平地では気持ちよく走れても、いざ上り坂に差しかかると急に脚に負担がかかり、途中で止まってしまうことも少なくありません。特にママチャリは重量があり、前傾姿勢になりやすいため、体のバランスや漕ぎ方を工夫しないとすぐに疲れてしまいます。

しかし、ギアの選び方や立ち漕ぎの使い方、疲れにくい漕ぎ方の工夫などを取り入れることで、電動自転車でなくても快適に坂道を登ることができます。また、漕がなくても進むように感じる走り方のコツや、日常的なメンテナンス方法を知ることで、より効率的で楽しいサイクリングが可能になります。

実際に日本の自転車利用目的を見ても、「買い物」が70%以上と最も多く、「レジャー・健康づくり」が約30%、「通勤」も20%強を占めています(内閣府 国民アンケート調査結果)。つまり、自転車は生活に密着した移動手段であり、坂道の走りやすさは日常の快適さに直結しているのです。

この記事では、自転車で坂道を楽に登る方法を、初心者でもわかりやすい形で解説します。

この記事を読むとわかること
  • 坂道の上り下りを快適にする日常メンテナンス
  • ママチャリで坂道を登るときの具体的なコツ
  • 上り坂に強くなるためのギアや漕ぎ方の工夫
  • 疲れにくい姿勢と走り方のポイント
目次

自転車で坂道を楽に登る方法

ここでは以下のポイントについて解説します。

  • ママチャリで坂道を登るときに意識すべきポイント
  • 坂道がしんどいと感じる原因と解決法
  • 上り坂に適したギアの使い方と調整のコツ
  • 電動以外でも坂道が楽な自転車の特徴
  • 立ち漕ぎを効果的に取り入れるタイミング
  • 疲れにくい漕ぎ方で坂道を克服する方法

ママチャリで坂道を登るときに意識すべきポイント

坂道を辛いと感じるのには、物理的な抵抗と心理的なストレスという、二つの明確な原因が存在します。これらの本質を理解することで、単なる根性論ではない、科学的かつ戦略的なアプローチで坂道を克服することが可能になります。

物理的な観点から見ると、坂道は平坦な道とは根本的に異なる運動を要求します。平地では慣性や重力が推進力を助けてくれますが、上り坂では常に自分自身の体重と自転車の重さ、さらには重力という大きな力に逆らって進む必要があります。

このため、平地よりも格段に大きな力が必要となり、力任せにペダルを踏み込めば、それはもはや本格的な筋力トレーニングとなり、呼吸が苦しくなるほどの体力を奪われます。この過度な負荷は、急速に疲労物質を蓄積させ、「もう漕げない」という状態に陥りやすくします。

一方、心理的な側面も無視できません。坂道は見た目にも精神的なプレッシャーが大きく、果てしなく続くように感じられることがあります。登り切れるかという不安や、途中で止まってしまう恐怖が、身体のパフォーマンスをさらに低下させることがあります。

これらの問題に対する解決策は、力の使い方を根本的に変えることにあります。坂道を楽に登るための鍵は、いかに脚への負担を抑えるかです。これは、軽いギアを積極的に使い、ペダルの回転数(ケイデンス)を高く保つことで実現できます。重いギアで無理に漕ぐと、ケイデンスが落ち、一回あたりのペダル踏み込みに必要な力が増大します。この高負荷な運動は筋肉に大きなダメージを与え、早期の疲労を引き起こします。

対照的に、軽いギアでクルクルとペダルを回すことは、筋肉への負担を最小限に抑え、心拍数や呼吸数を安定させることで、持続的な力を発揮することを可能にします。このアプローチは、坂道への心理的な恐怖を軽減し、戦略的な走りを可能にするための基礎となります。

坂道克服は、単なる体力勝負ではなく、物理的・心理的要因を理解し、力に頼らない賢いアプローチを実践することで、誰にでも達成可能な目標となります。

上り坂に適したギアの使い方と調整のコツ

変速ギアは、坂道走行を劇的に楽にするための最も強力なツールの一つです。その使い方をマスターすることで、坂道でのペダリング効率を最大化し、疲労を最小限に抑えることができます。

上り坂でのギア選択の基本は、ペダルを回しやすくするためにギアを軽くすることです。自転車のギア比を理解すると、この原則がより明確になります。軽いギアは、後輪の歯車(カセットスプロケット)を大きく、前輪の歯車(チェーンリング)を小さくすることで実現されます。

これにより、ペダルを1回転させた時に後輪が進む距離が短くなり、より軽い力でペダルを回せるようになります。逆に、平地や下り坂でスピードを出す際には、重いギアが適しています。

最も重要なのは、変速のタイミングです。変速は、坂道に差し掛かる前や、勾配が変化する前に完了させておくことが鉄則です。多くの人が陥りがちな間違いは、坂道の途中で「ペダルが重い」と感じてから慌ててギアを変えようとすることです。

しかし、この時点では既に自転車と身体に大きな負荷がかかっているため、無理な変速はチェーンに過度のストレスをかけ、「ガッチャン」という異音や、最悪の場合はチェーン外れや変速機の故障につながる可能性があります。

また、停車直前にギアを軽くしておくことも、日常的な走行を快適にする上で有効な技術です。これにより、信号待ちからの漕ぎ出しや一時停止からの再出発時に、足への負担を軽減し、スムーズなスタートが可能になります。

これらのギアチェンジの習慣は、単に坂道を楽にするだけでなく、自転車のコンディションを保ち、長期的に安全で快適な走行を維持するための重要な要素と言えます。

以下に、状況別のギアチェンジの基本原則をまとめます。

状況ギア選択の基本メリット注意点
上り坂軽いギア(後輪を大きく、前輪を小さく)ペダリングが軽くなり、筋肉への負担が軽減される坂道に入る前に変速を完了させる
平坦な道中間のギア速度とペダルの軽さのバランスが良い定期的なギアチェンジで疲労を分散
下り坂重いギア(後輪を小さく、前輪を大きく)少ない回転数で速度を維持できる坂に入る前に変速を完了させる
漕ぎ出し軽いギアスタート時の足への負担を軽減し、スムーズに発進できる停車前にギアを軽くしておく

電動以外でも坂道が楽な自転車の特徴

電動アシスト自転車が坂道に強いのは広く知られていますが、非電動の自転車にも坂道での性能を向上させる様々な特徴が存在します。自身の利用目的や予算に合わせて、これらの特徴を理解することが、最適な一台を選ぶ上で重要です。

まず、坂道における最大の武器は車体の軽量性です。坂道を登ることは、自分自身の体重に加え、自転車の重力に逆らう運動です。車体が軽ければ軽いほど、この抵抗が少なくなるため、脚への負担が大幅に軽減されます。クロスバイクや一部のミニベロは、一般的にママチャリよりも軽量に作られており、坂道に強いとされています。

次に、多段変速ギアの存在です。ママチャリの多くは3段や6段の変速ですが、クロスバイクなどにはより多くの段数のギアが搭載されており、急な坂道に対応する非常に軽いギアから、高速走行に適した重いギアまで、幅広い選択肢が提供されています。これにより、どのような勾配や路面状況でも、自身の脚力に最適なペダリング負荷を維持することが可能になります。

さらに、近年注目されているのが、新しい非電動アシスト技術である「フリーパワー」です。これは、ペダル内部に内蔵された特殊なシリコンの反発力を利用して、ペダリングを補助する電池不要のギアクランクシステムです。

メーカーのテストでは、長距離走行や坂道での負担軽減、漕ぎ出しの軽さといったメリットが示されており、特に膝や筋肉への負担を最大65%軽減する実験結果も報告されています。

しかし、この技術には慎重な評価も存在します。一部の試乗レビューでは、「電動アシストのようなアシスト感がほとんどない」「ペダルを漕ぐたびにガクガクとした違和感がある」といった意見も報告されています。

この評価の乖離は、フリーパワーの仕組みと、電動アシスト自転車の仕組みの違いに起因します。電動アシストが「ペダルを漕ぐ力」にモーターの力を物理的に上乗せすることでパワーを増幅するのに対し、フリーパワーは、ペダリングの回転力が最も弱くなる「デッドゾーン」(上死点と下死点)でシリコンが反発することで、力の伝達効率を向上させる仕組みです。

したがって、電動アシストのような「ぐいぐい進む」感覚とは異なり、ペダリング全体の滑らかさや効率の改善に貢献する技術と言えます。

この技術は、物理的なパワー増幅を期待するユーザーの期待値と、実際の機能との間にギャップを生む可能性があるため、導入を検討する際には、この仕組みの違いを理解し、実際に試乗して自身の感覚に合うかを確認することが重要です。

立ち漕ぎを効果的に取り入れるタイミング

立ち漕ぎ、または「ダンシング」と呼ばれる走法は、坂道を攻略するための強力なテクニックですが、その使用にはタイミングと正しいフォームの理解が不可欠です。

立ち漕ぎの最大のメリットは、全身の体重をペダルに乗せることができるため、瞬間的に大きなパワーを発揮できる点にあります。この特性から、急で短い坂道を一気に駆け上がる場合や、勾配が緩んだ場所で一時的にペースを上げたい場合に特に有効です。

また、座り漕ぎ(シッティング)とは異なる筋肉群(主に大腿四頭筋)を使うため、長時間のヒルクライム中に座り漕ぎで疲労した筋肉を一時的に休ませ、疲労を分散させる「休むダンシング」として取り入れることもできます。

一方で、立ち漕ぎにはいくつかのデメリットが存在します。座り漕ぎに比べてエネルギー消費が約10%多く、非常に疲れやすい走法です。また、サドルという支点が失われるため、重心のバランスを崩しやすく、特に子供や荷物を乗せているママチャリでは転倒の危険性が高まります。

さらに、無理に力を込めた立ち漕ぎは、チェーンやギアといった自転車の駆動系に大きな負担をかけ、部品の寿命を縮める原因にもなります。

正しい立ち漕ぎのフォームは、効率と安全を両立させる上で重要です。体重はハンドルに頼りすぎず、真下へ、ペダルにしっかり乗せることを意識します。この際、体幹をしっかりと使うことで、不要な上半身の揺れを防ぎ、力を効率的にペダルに伝達できます。

自転車を左右に振るのは自然な動きですが、体を振らないように注意し、身体の中心に一本の軸があるようなイメージを持つと良いでしょう。

総じて、立ち漕ぎは力任せに登るための手段ではなく、「座り漕ぎでは対応が困難な状況」や「疲労の分散」など、特定の目的のために賢く利用すべき「奥の手」として位置づけられます。

特に、荷物や子供を乗せている場合は、無理に立ち漕ぎをするよりも、一度自転車を降りて押して歩くという選択肢が、最も安全で賢明な判断と言えます。

疲れにくい漕ぎ方で坂道を克服する方法

疲れにくい漕ぎ方を身につけることは、坂道走行のパフォーマンスを向上させるだけでなく、日々の自転車利用全体を快適なものに変えます。このアプローチは、ペダリング、呼吸、姿勢という3つの要素を統合した総合的な疲労マネジメントの観点から考えることが重要です。

まず、最も効率的なペダリングは、物理的な力の伝達を最大化する「時計の針」理論に集約されます。ペダルを踏み下ろす動作において、時計の「2時」の位置から力を加え始め、最も効率的な「3時」の位置でパワーのピークを迎え、ペダルが「5時」の位置に来るまで力を伝えることを意識します。下死点(6時)では力を抜くことで、無駄なエネルギー消費を防ぎ、次の踏み込みに備えます。

このペダリングでは、かかとがつま先より上をキープすることが重要であり、これにより太ももの大きな筋肉を効率的に使えるようになります。かかとが下がりすぎると力が逃げ、つま先が立ちすぎると足首が固定され、力の伝達にロスが生じてしまいます。

次に、呼吸法とペース配分です。深い呼吸は心拍数と呼吸数を安定させ、心肺機能への負担を軽減します。特にヒルクライムでは、序盤から飛ばしすぎず、「話せるくらいのペース」を維持することが、最後まで走りきるための鍵となります。

息切れを感じたら、無理せずペースを落とすことが大切です。深い呼吸のためには、猫背にならず背中をまっすぐ伸ばした姿勢を保ち、肩甲骨を開く意識を持つと、より多くの酸素を取り込むことができます。

最後に、上半身の適切な使い方です。ペダリングは脚だけでなく、全身の力を活用することが疲労軽減につながります。背筋を伸ばし、肩や首をリラックスさせ、腕を軽く曲げてハンドルを握ります。ペダリングのリズムに合わせて腕を振ることで、脚の動きがスムーズになり、全身の筋肉をバランス良く使うことができます。

これらのアプローチは、単一のテクニックではなく、互いに補完し合う複合的なシステムです。正しいペダリング技術は力の伝達効率を高め、適切な呼吸法は心肺機能の負担を軽減し、正しい姿勢は筋肉や関節への負担を分散させます。

これらを組み合わせることで、坂道走行における疲労の発生メカニズムに多角的に対処し、持続可能な走り方を実現することができます。

自転車で坂道を楽に登る方法の応用と安全対策

ここでは以下のポイントについて解説します。

  • 「登れない」と感じるときの練習法と工夫
  • ママチャリで坂道の限界を突破するための体の使い方
  • 漕がなくても進むように感じられる走りの秘訣
  • 疲れにくくするための日常的なメンテナンス
  • ブレーキが効かないときの危険性と対処法
  • 下り坂を安全に走るために気をつけたいポイント
  • 自転車で坂道を楽に登る方法と疲れにくい漕ぎ方の総まとめ

「登れない」と感じるときの練習法と工夫

坂道は、身体的な体力だけでなく、心理的な壁を乗り越えることも要求します。「登れない」という感覚を克服するためには、実践的なトレーニングと、心の準備を組み合わせることが効果的です。

坂道を克服するための実践的なトレーニング法として、ヒルトレーニングが挙げられます。これは、近所の適度な勾配の坂(50〜100メートル程度)を選び、上りをダッシュで、下りをゆっくりとジョギングやウォーキングで戻るインターバルトレーニングを繰り返す方法です。

これにより、心肺機能と脚力を効率的に同時に鍛えることができます。また、坂道を含む長距離を走る「ロングラン」は、全身の持久力を養い、坂道でも持続的に力を発揮できる身体をつくるのに役立ちます。

坂道に挑む際には、心の準備も非常に重要です。坂道が辛いと感じる原因の一つは、「この辛さがいつまで続くのか分からない」という心理的ストレスです。

この漠然とした恐怖を克服するためには、「この坂を一度登り切る」「あと1キロ頑張る」といった具体的な目標を設定することが有効です。小さな目標をクリアしていくことで、達成感が得られ、自信が増し、次の挑戦への意欲へと繋がります。

さらに、仲間との協力も大きな力になります。友人や家族と一緒に坂道に挑戦することは、楽しさを増し、辛さを乗り越えるモチベーションになります。不安や苦しさを共有し、互いに励まし合うことで、心が軽くなり、一人では達成できなかった目標も乗り越えられることがあります。

坂道克服は、単なる体力や技術の向上だけでなく、心理的なアプローチと社会的なサポートを組み合わせることで、より確実に達成できる目標となります。

ママチャリで坂道の限界を突破するための体の使い方

坂道を効率よく、そして疲れにくく登るためには、脚の力だけに頼るのではなく、体幹を含む全身の筋肉を連動させることが不可欠です。

体幹(コア)は、ペダリングの安定性を高め、力のロスを減らす上で極めて重要な役割を果たします。不安定な体幹では、せっかくの脚力がペダルに効率よく伝わらず、無駄な体の揺れとして分散されてしまいます。

体幹がしっかりしていると、座り漕ぎでの姿勢が安定するだけでなく、立ち漕ぎ(ダンシング)をする際も不要な体の揺れを防ぎ、力を効率的にペダルに伝達できます。

したがって、坂道でのパフォーマンス向上を目指すなら、脚力だけでなく体幹を鍛えるトレーニングを取り入れるべきです。

  • 多関節運動:複数の関節を同時に動かすトレーニングは、実際のペダリングの動きに近く、坂道で使える筋肉を効率的に鍛えます。スクワットやランジは、大腿四頭筋を中心に脚全体の筋肉を強化するのに効果的です。
  • 筋持久力トレーニング:ヒルクライムでは、瞬発的なパワーよりも、一定のパワーを持続的に出し続ける筋持久力が重要です。比較的軽い負荷で回数を多くこなすトレーニングが、筋肥大による体重増加を避けつつ、筋持久力を向上させるのに適しています。
  • 体幹トレーニング:プランクやサイドプランクなどのトレーニングは、体幹の安定性を高め、坂道での姿勢を維持する力を養います。これにより、長時間のライディングでも疲労を軽減し、より楽に坂道を登れるようになります。

坂道でのパフォーマンス向上は、単に脚の筋肉を鍛えるだけでなく、ペダリングの土台となる体幹を強化し、全身を連動させることで飛躍的に改善します。

漕がなくても進むように感じられる走りの秘訣

坂道を楽に登るための秘訣は、上り坂での力の使い方だけでなく、平地や下り坂での「走り」全体を最適化することに隠されています。
このアプローチは、自転車走行を一つのエネルギーシステムとして捉え、無駄なエネルギー消費を徹底的に排除することを目指します。

まず、「慣性」を最大限に利用することが重要です。平地や下り坂では、自転車に働く慣性や重力によって、人の力を借りずとも速度を維持することができます。

この「惰性」を味方につけ、急な加減速を避けることで、坂道に備えて無駄なエネルギーを温存することができます。例えば、信号やカーブに差し掛かる際、ギリギリまでブレーキをかけずに惰性で進むことで、減速に必要なエネルギーを最小限に抑えられます。

また、走行全体のスムーズさを追求することも重要です。坂道を下った後の平地では、失速する前にすぐにペダリングに切り替えることで、勢いを維持したまま次の上り坂にスムーズにつなげることができます。

ブレーキの使用を可能な限り減らし、常に滑らかな走行を心がけることは、長距離やアップダウンのあるルートで疲れにくくする上で非常に有効な秘訣です。

このように、坂道克服は坂道だけを考えるのではなく、坂道に至るまでの走り全体を最適化することから始まります。
この総合的なアプローチは、小さな工夫の積み重ねによって、より少ない力で自転車を効率的に進めることを可能にし、結果として「漕がなくても進むように感じられる」ような、快適な走行を実現します。

疲れにくくするための日常的なメンテナンス

自転車は、日々のちょっとした点検と整備を積み重ねることで、走りやすさや疲労の感じ方が大きく変わります。

実際、乗車前に必要な点検を「ほとんどしない」という人は 86.9% に上り、そのうち 5人に1人 が故障やヒヤリハットを経験しているという調査結果もあります (au損害保険 自転車点検・整備に関する調査)。

つまり、日常的なメンテナンスを行うだけで、無駄な疲労を防ぎ、走行中の安全性も高めることができるのです。

自転車のコンディションは、坂道でのパフォーマンスに直接影響します。日々の簡単なメンテナンスは、走行抵抗を減らし、自身の力を効率よく推進力に変換するために不可欠な活動です。

最も基本的かつ効果的なメンテナンスの一つが、タイヤの空気圧の管理です。

適正な空気圧を保つことで、タイヤと路面の接地面積が最適化され、転がり抵抗が減少します。これにより、軽いペダリングでスムーズに走行でき、特に坂道の多いルートではその効果が顕著に現れます。
空気圧が低い状態では、ペダルが重く感じられ、不必要な疲労が増加してしまいます。

次に大切なのが、チェーンの清掃と注油です。

チェーンに砂や泥が付着していると、摩擦が増してペダルが重く感じられます。定期的にチェーンクリーナーで汚れを落とし、専用のオイルを注油することで、チェーンの滑らかさを保ち、ペダリング効率を向上させることができます。

これは単に自転車の寿命を延ばすだけでなく、自身の力を最大限に効率よく推進力に変換するためのパフォーマンス維持活動とも言えます。

さらに、サドルやハンドルの高さを適切に調整することも重要です。
ペダルが最も遠い位置に来たときに膝が少し曲がる程度のサドル高に設定することで、脚全体の筋肉をバランス良く使え、腰や膝への負担を軽減できます。

これらの日常的なメンテナンスは、手間がかかるように感じられるかもしれません。
しかし、その効果は計り知れず、習慣化することで坂道で不必要な力を消費せずに、より楽に、そして安全に走行することが可能になります。

ブレーキが効かないときの危険性と対処法

自転車の安全な走行にとって、ブレーキが確実に機能することは不可欠です。
坂道、特に下り坂では、ブレーキの効きが悪ければ重大な事故につながる可能性があります。
ブレーキの不調は突然発生するものではなく、日常的な使用の蓄積によって生じることがほとんどです。

ブレーキの効きが悪くなる主な原因は以下の3つです。

ブレーキの効きが悪くなる原因
  1. リムとブレーキシューの汚れ:リムやブレーキシューにゴミ、ホコリ、リムが削れた金属片などが付着すると、摩擦力が低下し、ブレーキの効きが悪くなります。
  2. ブレーキワイヤーの伸び:使用を重ねるうちにブレーキワイヤーが伸び、レバーの引きしろが深くなり、効きが甘くなります。
  3. ブレーキシューの摩耗:ブレーキシューのゴム部分がすり減ることで、リムとの間隔が広がり、制動力が低下します。
    ブレーキシューに刻まれた溝がなくなってきたら交換の目安です。

自分でできる簡単な応急処置としては、まず油汚れのついていないウェスでリムとブレーキシューの表面を拭き取ることが挙げられます。
軽度のワイヤーの伸びであれば、ブレーキレバーの根元にあるアジャスターを回して微調整が可能です。
ブレーキシューに異音がする場合は、金属片が刺さっている可能性があるため、ブレーキシューを取り外してピンなどで金属片を取り除くことも有効です。

しかし、これらの応急処置を試しても改善しない場合や、ワイヤーが錆びている場合、レバーを深く握ってもブレーキが効かない場合は、速やかに専門の自転車店に持ち込むべきです。

ブレーキは自転車の「命」であり、その不調を放置することは大きなリスクを伴います。
坂道走行の安全性を確保するためにも、日頃からブレーキの点検を怠らないことが最も重要な安全対策と言えます。

下り坂を安全に走るために気をつけたいポイント

坂道は登りだけでなく、下りこそが真の技術と注意力が試される場です。
特に、重心が高くスピードが出やすいママチャリでは、安全な下り方を習得することが不可欠です。

最も重要なのは、スピードコントロールです。
下り坂では、速度を出しすぎないことが基本中の基本です。
特にカーブに差し掛かる前には、余裕を持って十分に減速しておくことが大切です。

急ブレーキは転倒の危険が高まるため、避けるべきです。
ブレーキをかける際は、直線では前輪ブレーキをメインに使い、カーブでは後輪ブレーキをうまく使うことで、バランスを保ちながら減速することができます。

次に、重心と姿勢の管理です。
下り坂では重心が前輪に偏りがちですが、これを防ぐために腰をサドルの後ろに引くことを意識します。
これにより、急ブレーキ時にも車体が安定し、転倒のリスクを減らせます。

また、ハンドルを握る際は、肩や腕に力を入れすぎず、重心を低く保つことで、安定性が増します。

最後に、視線とライン取りです。
視線は常に前方や遠くへ向けることが重要です。
手元や路面ばかりを見ていると、速度感や距離感が失われ、前方不注意による事故につながるリスクが高まります。

カーブでは、ハンドル操作だけでなく体重移動を意識して曲がります。
外側の手と内側の足に体重をかけることで、安定したコーナリングが可能となります。

下り坂での安全確保は、単にブレーキをかけるだけでなく、重力や遠心力にどう対抗するかという物理法則に基づいた全身のコントロールが鍵となります。
これらの技術を身につけることは、坂道での安全を確保する上で最も重要なスキルであり、安心して自転車ライフを楽しむための土台となります。

自転車で坂道を楽に登る方法と疲れにくい漕ぎ方のまとめ

本記事のまとめ
  • 坂道走行の技術は独立したものではなく、互いに関連する総合的なシステムを形成している。
  • 坂道克服は体力や根性だけでなく、賢い力の使い方と日々の工夫によって達成される。
  • ギアの賢い利用:坂道前に軽いギアに切り替え、不必要な負担を避ける。
  • 効率的なペダリング:足の指の付け根でペダルを捉え、高ケイデンスで回すことを意識。
  • 正しい姿勢の維持:サドル・ハンドル調整と体幹意識で、腰や肩への負担を軽減。
  • 日々の走行を慣性とスムーズさの観点で見直し、無駄なエネルギー消費を減らす。
  • 体幹トレーニングや心理的工夫で疲労を軽減し、持続的に力を発揮できるようにする。
  • ブレーキ、チェーンなどの基本的なメンテナンスを怠らず、安全性を確保する。
  • 自転車の特性を理解し、自身の身体の使い方を最適化することが坂道克服の鍵。
  • 安全意識を高めることで、坂道走行は「楽」で「楽しい」体験に変えられる。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次